パピロウヌーボ 2023

 
 (畳敷きの部屋にひとり立つプロ角)
 
プロ角マキコ(以下プロ角)「なんなのよ、どこなのよ、ここ。私もう芸能人じゃないのよ。こういう、詳細を教えられずに撮影が開始するのとか、もう勘弁してちょうだいよ。クロちゃんじゃないのよ、私。分かってる? プロ角なのよ?」

 (ふすまが開き、優香が現れる)

優香(以下優香)「プロ角ねえさん、お久しぶりでやんす。早速ぷりぷりしてるでやんすね」
プロ角「ちょっと優香、誰が血流のいい金玉肉袋よ!」
優香「そっちのぷりぷりじゃないぞなもし……」
プロ角「えっ、じゃあMとかダイヤモンドとかのほう?」
優香「ああ、めんどくさい素人でやんす……」
プロ角「こら、素人って言うんじゃないわよ。あくまで元女優よ。あ、女優と言えば、やってたわね、優香。NHK土曜ドラマ、やさしい猫」
優香「あ、観てくれたでやんすか」
プロ角「いや、観はしなかったけど」
優香「そうでやんすか……」
プロ角「あの時間は私、アナザースカイ観なきゃいけないから」
優香「……アナザースカイを『観なきゃいけない』人間はこの世にいないでやんすよ……、あれはそういう番組ではないでやんすよ」
プロ角「世が世なら中条あやみじゃなくて私が今田の隣にいたんでしょうにね」
優香「…………」
プロ角「どうしたの、黙って。屈託があるの? あるいは偏狭なの?」
優香「……プロ角ねえさん、相変わらずでやんすね。なんか逆にホッとするでやんす」
プロ角「そう? ならよかった。ねえ、ところでマスク取ってもいい? 私、マスクしてるより、マスクしてないほうがぜんぜんいいのよ」
優香「おっ、今年の新ネタでやんすね。あの記事を見たとき、プロ角ねえさんの変わらなさに、なんか感動したでやんすよ。それで、息子さんの通うインターナショナルスクールとは和解したでやんすか」
プロ角「それは、まあ、いろいろよ。こんなところで軽々な発言は止すわ」
優香「あ、マジだー……」
プロ角「ところで優香、今日はなんなの。ここはどこなの?」
優香「え、プロ角ねえさん、ぜんぜん聞かされてないんでやんすか。スタッフもなるべく関わりたくないのかもしれないぞなもし。でも分かりそうなもんでやんしょ。ほら、これ」
プロ角「なによ、これ。ショーツ?」
優香「ちんこに添わせれば、神羅万象ありとあらゆるものはショーツになるのかもしれない……」
プロ角「でもいったいどう添わすのかしら……?」
優香「プロ角ねえさん、違うでやんすよ」
プロ角「この、脚みたいになっている曲線の部分、ここかしら。たしかにこれ自体が、ちょっとカリ首めいた感じがなきにしもあらずだわ」
優香「だから違うって」
プロ角「ちょっと、そこの若いスタッフ、ここにあんたのこちんもりを当ててみなさいよ」
優香「プロ角ねえさん」
プロ角「なによ、なにプロ角の命令を拒んでんのよ。元マネージャーは拒まなかったわよ。拒まず一茂の家の壁に落書きしたわよ。なんなのあんた、抵抗精力なの? ほら、そんなにもったいぶるなんて、どれほどのえらちんぽだってのよ、ほら、ほら」
優香「バカ! やめろ!
プロ角「ゆ、優香……」
優香「プロ角ねえさんのその感じ、当時はよかったかもしれないでやんすけど、今はもうダメでやんす。GOOD AND BADでやんす」
プロ角「…………そっか。これが歳月なのね。12年後の世界なのね。志村けんがテレビで女の子のおっぱいを揉んでた時代は過ぎ去ったのね」
優香「それは12年よりもっと前でやんすし、あと私の前で志村けんの話はしないでほしいでやんす」
プロ角「あら、優香にもたくさんのおもひでぶぉろろぉぉんがあるのね……」
優香「話を元に戻すぞなもし。プロ角ねえさん、これは将棋盤でやんす」
プロ角「ショーギバン? なんだそれ、うめえのか?」
優香「急なキャラ変! 急にジャンプの主人公的なやつ! めんど!」
プロ角「嘘よ、嘘。ゴムゴムの嘘よ。ほんとは分かってるわよ。学園祭のとき、クラスの人たちとお揃いで穿くやつでしょ」
優香「それはクラショーでやんす! そうじゃなくて、将棋盤! 苦しすぎるでやんす!」
プロ角「ショーギバン……ショーギ、バン……ショーギ……しょうぎ……あ、将棋! そうか、これってもしかして、将棋をするための盤なんじゃないの、優香!」
優香「ブラボー! AIに頼らず、ちゃんとじーみーちーに理解に辿り着いたでやんすね。そうでやんす。これは将棋盤。そしてここは千駄ヶ谷にある将棋会館でやんす」
プロ角「やめてよ!」
優香「えっ?」
プロ角「会館って言わないで! 年金のトラウマを思い出すでしょ!」
優香「自分からでやんすよ! あまりにも自分からブッ込んでるでやんすよ、プロ角ねえさん! 会館と言えば年金会館ってわけでもないでやんすぞなもし!」
プロ角「……そうなの? 年金を払ってなかった私が将棋会館に足を踏み入れてもいいの?」
優香「もちろんでやんす」
プロ角「…………ふーーーーーーーーっ」
優香「そんなに安心する?」

 (スタッフから指示が出る)

優香「あ、そろそろ今年のゲストを紹介するぞなもし」
プロ角「ゲスト? そいつつええのか?」
優香「急な悟空! でもその質問の答えはイエスでやんす。つええでやんす」
プロ角「わかった! ヒョードルね」
優香「違うでやんす。将棋会館でヒョードルと待ち合わせるの、シュールすぎるでやんす」
プロ角「じゃあ誰よ。ミルコ・クロコップ?」
優香「ふすまの向こうからミルコ・クロコップが出てきたら、私たち何を話すんでやんすか」
プロ角「ジェロム・レ・バンナ? ピーター・アーツ? アーネスト・ホースト?」
優香「当時のK-1から離れるぞなもし! ここ将棋会館! つええのは将棋の話に決まってんでやんしょ!」
プロ角「あ、そういうこと。なーんだ、せっかく上腕二頭筋に掴まって持ち上げてもらうやつやってもらおうと思ったのにな」
優香「プロ角ねえさんの身長であれは難しいでやんすよ……」
プロ角「……え、でもちょっと待って。いま将棋会館にわざわざ来て、つええやつってことは、もしかして? もしかしてもしかして? あの? あの子来ちゃう? プズィー・スォータ来ちゃう?」
優香「ちょっとK-1ファイターっぽい呼び方でやんすね」
プロ角「だとしたら私、めちゃくちゃ聞いちゃうわよ」
優香「お、プロ角ねえさん、将棋に興味あったんでやんすか。知らなかったでやんす」
プロ角「朝ごはんとか、昼ごはんとか、おやつとか、晩ごはんとか、夜食とか」
優香「ばか
プロ角「なによ。棋士に他になにを聞くっていうのよ」
優香「典型的な丘MAXでやんすね」
プロ角「いや、でもプズィー・スォータ来ないわよ。プズィー・スォータがバラエティ番組出てるの観たことないもん。それにプロ角よ? 年金未払い、一茂落書き、息子の通うインターナショナルスクールとのトラブルのプロ角よ? 誰が出るのよ」
優香「プロ角ねえさん、自虐がひどいでやんす。そんなPESSAT行動は止すでやんすよ」
プロ角「あ、でもそれじゃあ、あれじゃない? ほら、プズィー・スォータの師匠の人。あの人ならあり得るわ。あの人めちゃくちゃテレビ出るもん。名前覚えらんないけど」
優香「おっ。あの人でやんすね」
プロ角「そう、あの人」
優香「あの人、なるほど」
プロ角「あの人なんでしょ、名前覚えらんないけど」
優香「さー、どうでやんしょうね。それでは登場していただきましょう。今年のゲストはこの方でやんす!」

 (ふすまが開き、ゲストが入ってくる)

???「こんにちは、はじめまして」
プロ角「……は、はじめまして」
???「今日はよろしくお願いします」
プロ角「はいこちらこそ。……ねえ、ちょっと優香、誰なの、この女性」
優香「えっ、プロ角ねえさん、分からないんでやんすか」
プロ角「分からないわよ。誰なのよ、のび助? あるいは玉子?」
優香「違うでやんす。じゃあすみません、うちのちんこばかがお名前が分からないというんで、自己紹介をお願いできますかぞなもし」
???「ぞな……、もし……?」
優香「お願いするでやんす」
???「はい。元女流棋士、林破直子です」
プロ角「…………」
林破直子(以下林破)「本日はよろしくお願いします。なんでも聞いてください」
プロ角「やっぱり2005年に行なわれたPRIDEでのミルコとのヘビー級タイトルマッチが印象に残っているんですけど、あの試合はどういう意気込みで臨んだんですか」
林破「…………そうですね、ミルコが打撃主体で攻めてくることは予想していたので、私は間合いを取ることを意識して、冷静にポイントを取りに行きました。結果としてタイトルを防衛することに成功したわけですが、白熱した試合と言えば聞こえはいいですけど、少しショーとしては盛り上がりに欠けるものになってしまったかもしれませんね」
優香「プロ角ねえさん、それはヒョードルにする質問でやんすし、林破さんもヒョードルの代わりに答えなくていいでやんす!」
プロ角「じゃあ、お昼ごはんはなんでしたか?」
林破「おうどんです。きつねうどん」
プロ角「へえ……」
優香「へえ……」
林破「好物なんです」
プロ角「へえ……」
優香「へえ……」
林破「あといなりずしもひとつ」
プロ角「それはコモディイイダ中村橋店の?」
林破「いえ、うどん屋さんのです」
プロ角「おいしかったですか?」
林破「そうですね」
優香「油揚げがお好きなんでやんすか?」
林破「そうですね」
プロ角「へえ……」
優香「へえ……」
林破「…………」
プロ角「じゃあそろそろ、最後に今後の目標をお聞かせください」
林破「はい。そうですね、不惑不出の精神でがんばりたいと思います」
プロ角・優香「ありがとうございました」

また来年お会いしましょう