第13回cozy ripple名言・流行語大賞発表

 
 今年もcozy rippleにさまざまな名言・流行語が生まれました。
 今年も、と言いましたが、実は2年分です。去年は主催者の諸般の事情によって開催が見送られたため、今年は2年ぶりの開催となりました。1回分が飛んでしまったことはもちろん寂しいですけど、その我慢した分だけ、久々の開催が盛り上がるというものです。去年と言えば、2020年からの1年延期で開催予定だった東京オリンピックが、結局のところ直前で中止になってしまったことは残念でしたが(英断だったとは思いますが)、しかし人類は必ずや、この鬱憤をパリで見事に晴らしてくれるに違いありません。
 というわけで、東京オリンピックが中止になった世界線からお送りする第13回cozy ripple名言・流行語大賞、通常より増量してお送りする今年のエントリーワードは以下の通りです。



和譲・恭敬・寛恕

 2020年からいろいろあって、心機一転というか、2021年のほぼ正月みたいなタイミングで島根に再移住し、それで生活は無事に落ち着いたかと言えばまだまだそんなこともなくて、この時期からもまだまだ混迷の日々は続く。そんな暮しの中で、引っ越し後初めて出雲大社にお詣りし、おみくじを引いた。そこに書いてあった文言である。「人に交はるには、和譲・恭敬・忠恕を旨とすべし。仮にも驕慢の態をなすべからず。」というのがその全文。つらい精神状態だったこともあり、心に響いた。しかしこの言葉を噛み締めることで事態はみるみる改善されたかと言えば決してそんなこともない。こちらが和譲・恭敬・忠恕を旨としても、向こうがそれを旨としていなければ交信は不可能なのだ、ということを何度も感じた。そんな格闘の日々でした。



それってどんなりんご?

 あるとき夢の中で遊んでいたゲームの名前。つまり僕の創作した遊びである。ゲームの相手はファルマンの好色な女友達という架空の人物。ルールはと言うと、このゲームは男と女で対戦し、互いに「それってどんなりんご?」と訊ね合い、その特徴を答え合うのだが、「りんご」は代名詞であり、中身は毎回異なる。返答をヒントにその正体を当てるのがゲームの骨子なのだが、大事なポイントとして、その返答は男女それぞれ、まるで自分の性器のことを言っているかのように表現しなければならない。そういう大人な遊び。



僕の個人的な緊急事態宣言解除

 2020年春の、勤めていた縫製の工場の閉鎖宣告から始まった、なぜかほぼコロナと同期している僕の緊急事態宣言期間は、2021年9月末日をもって無事に終了した。本当か。終わったかに見えて、単なる合間であり、実は長期的な見方をすれば今もまだその渦中にあるのではないか、ということを言い出したらキリがないし、じゃあ単なる原子の集合体でしかないものが一定期間、個という意識を持って活動することそのものが緊急事態なんじゃないの、という話にもなってくるので、ここできっぱりと解けたこととする。「年季明け」とも日記の中でたびたび表現し、恨みを晴らすかのようにこの10月11月はたびたびレジャーへと繰り出した。



友達がいない状態でかたまってしまった

 かつてcozy ripple名言・流行語大賞を席巻した(ピークは2018年)、「友達がいない」系テーマは、度重なる転職やコロナ禍、そして転居によって、完全に崩壊した。「友達がいない」が崩壊したということは、「友達がいる」ということになったのかと言えば、もちろんそんなことはない。「友達がいない」と葛藤する観念が崩壊したのである。もはや欲しいとも一切思わなくなり、そして心にはなんの隙間もない。傷口は、刺激を受け続ければいつまでもジュクジュクし続けるけれど、清廉とした空気に当てて放置していれば、やがて治癒する。たとえ身が抉れていても、抉れた形がもともとの形のように、整うだろう。もうそうなった。私という大地から、友達という菌類は完全に駆逐されたのです。



ちんしょぼおじさん

 それまで互いのパソコンの背面を向かい合わせにし、すなわちディスプレイに何が表示されているのかは見えない配置になっていたファルマンと僕の机が、模様替えの結果、部屋の角でそれぞれ壁を向いて置かれるようになり、そのため振り返ればすぐに画面が見えるようになったことで、それまでのようにエロサイトをのびのびと眺めることができなくなった。そのことに忸怩たる思いを抱き、このままちんこの筋力が落ち、ちんこ発想で世界を明るく照らす力が衰えたら、ただ物腰柔らかで優しく、穏やかな、脚の間に黒ずんだ排泄器官でしかないものをぶら下げた存在になる、という主張の中で放った言葉。この危機意識の果以あってか、この投稿当時から1年以上経った今、ぜんぜん大丈夫。文字通りの大丈夫である。



個精・多様精

 それは女子が使うべき言葉だから、という理由により、実はあまり使うのが好きではなかった「オナニー」「マスターベーション」という表現。それに代わる、男が用いるべき(ただし「センズリ」や「マスをかく」などは下品すぎて忌避する)表現を模索した結果たどり着いたのがこれ。ひとりで行なうのが個精ならば、ふたりないしそれ以上の、要するに他者とともに行なうのが多様精。「ひとりひとりの個精を大事にし、多様精あふれる社会を実現したい」というのはとてもいいフレーズだと我ながら思う。



顔パンツを巡る冒険

 「顔パンツ」という、本家の新語・流行語大賞にもノミネートされた言葉は、今年の僕に大いなるインパクトを与えた。それまで作っていた布マスクが顔パンツであるのなら、僕は下の口のマスクも作ることができるんだ、もとい作るべきなんだ、という天啓を得た気がした。冒険は「パピロウせっ記」に始まり、「BUNS SEIN!」を経て、「andp」に寄り道し、そして最後「nw」で実際に作ったものの紹介を行ない、終了した。大冒険だった。歌は終った。しかしメロディーはまだ鳴り響いている。
 


僕はただ、女の子をエロい目で見るのが好きなだけなんだ

 すぐに傷つき、すぐに燃える、失言にきわめて厳しい世の中である。人を傷つけてはいけない。それはもちろん分かる。でも傷ってなんだろう。巨大な生き物が体を動かすことで風が起り、それが小さな生き物の命を奪うかもしれない。じゃあ巨大な生き物は動いたらいけないのか。そうじゃないだろう。傷つけたいわけではない。傷つけられたくもない。だけど、あまりにも厳しすぎやしないか。ここから4ヶ月後、桜田元大臣も少子化問題に触れ、「女性はもっと男性に寛大になってほしい」と発言をし、その真意とは正反対に、女性たちからしっかり叩かれる結果となった。哀しい。



ショーツ

 シリーズ「ビキニショーツ製作漫談」の初回がこの日。はじめは「ビキニショーツ」だったが、男の「ビキニ」に含まれる「俺のもっこりどーだ!」感が、自分の創作理念にはそぐわないのではないかという思いがやがて募り、のちに「ビキニ」を省くこととなった。そのためエントリーワードとしてはこういう形とした。紹介される生地の柄を見ていただければ分かるように、創作理念は、「女の子の穿くようなショーツを自分が穿く歓び」である。だから呼び方も当然こうなる。



金玉蹴っ飛ばしてやる!

 俺のもっこりどーだ!感を忌避し、女の子が穿くようなショーツを穿きたい願望がある一方で、何度生まれ変わってもちんこのないほうの性に生まれるのは嫌だと考えている僕が、それでも女として生まれたらどんな少女だったろうかと夢想したとき、清潔で、ちょっと勝ち気で、女子のことをバカにする男子にはすぐにこう言い放つ活発な美少女だったんじゃないかと考え、大きな声でやってみせたら、夜のことだったのでファルマンに叱られた、そんな言葉。女の子と金玉という言葉の取り合わせって、独特のかわいらしさがあると思うんだ。



ジョニファー・ロビン

 作ったショーツを紹介していくにあたり、Googleのブログはショーツの広げた状態の画像を、公序良俗ルールによりアップさせてくれないため、ならばもういっそのことインスタグラムを開設し、そこにきちんと仕立てた画像をアップしていこうと考え、ならばやはり着用姿がいいだろうということで、ちょうど手に入ったマイナポイントを利用し、マネキンを購入した。頭なし、腕なし(肩まであり)、膝から下なしの、ガタイのいいマネキン。はじめ部屋に現れたときは戸惑っていた家族もじきにすぐに慣れ、さらにはファルマンによるこの名付けもあって、すっかり我が家の一員となった。今後も長い付き合いになるだろう。



小生に窮屈くらいでちょうどいい

 春先から作り始めたショーツが、暖かくなるにつれてやや窮屈に感じるようになり、なぜだろうと思案した結果、気温が低いときには縮みがちだった陰嚢が気温の上昇によって寛いだからだと喝破し、ならばそれに見合った形に型紙を修正しなければならないと考え、性器を収めるスペースをとても大きく取ってショーツを作ったところ、大きくしすぎ、穿いた際に生地が余ってだぶつくようになってしまい、心の底から哀しい気持ちになった、という出来事を経た上で到達した境地。「もうちょっと食べたいな」くらいがちょうどいい、というのと一緒。足ることを知るということ。



ちんこは空を飛ばない

 読んでいた本で、鳥は空を飛ぶためにペニスを持たないようになった、という記述を発見し、長年来の疑問が氷解した。僕は重度の高所恐怖症で、それなりの高さの建物の展望台でも足が竦むし、ましてや飛行機に乗って空を飛ぼうものなら、周囲の乗客の注目を集めるほどに顔面蒼白、挙動不審になるのだが、それはひとえに、空はちんこを許容しないという世界の法則が原因だったのだ。俺は男だけど平気だぜ、という人は、それは空が見過ごしてくれる程度のものしか持っていないということを主張しているだけである。僕のはそうではない。空が全力で拒むレベル。だから高い所に行くとあんなにもおぞ気が立つのか、と得心がいった。あなたの空を飛びたい。誰より高く飛びたい。しかしながら空を飛ぶには俺のちんこはあまりにも大きすぎる。



金玉肉袋

 インスタグラムを始めるにあたり、文面(キャプションという)で用いる言葉を最初から統一しておきたいと考え、ビキニショーツは「ショーツ」に、陰茎は「肉棒」になり、それでは男性器における陰茎以外の部分、すなわち睾丸および陰嚢のことはなんと表記するべきかと脳内会議を重ねた結果、ここにたどり着く。考え始めた際は、まさか4文字になるとは予想だにしていなかったが、玉系では睾丸だけを指しているようになってしまうし、袋系では陰嚢だけを指しているようになってしまうという問題をすっきり解決する、これが最適解であったと確信している。額に入れて飾りたいくらいのいい語句だと思う。



性癖オーダーメイド

 自分の穿く、自分好みのショーツなので、どこまでも自分勝手にデザインすることができる。後ろはフルバックがいい。サイドはなるべく細いほうがいいが、かと言って男の紐下着は気持ちが悪い。ウエストはできるだけ低くしたいが、尻の割れ目はきちんと隠したい。しかし陰毛が少し顔を出すセクシーさは演出したい。このように、オリジナルショーツは穿く人間の性的願望を忠実に叶えることができる。そこがいい。ちなみにこれが、cozy ripple名言・流行語大賞初の、ブログ以外からのノミネートとなった。時代ですね。



「すげえでかかったな!」「うん、でかかった!」

 プールの更衣室で、水着に着替えるためにちょうど僕が全裸でいたとき、そのすぐ横を通りかかった小学校高学年2人組が、通り過ぎてすぐに語り合ったやり取り。他に人はおらず、状況的に彼らが何を指していたかは火を見るよりも明らかである。なにぶん性的なことへの興味が強い年頃だろう。プールでは、先輩である大人のそれを見ては、大きいな、とか、そうでもないな、などと感想を持つに違いない。もちろんそれは、基本的には口に出さない。しかしあまりにインパクトが大きければ、思わず興奮して、共に見た友人と語り合いたくなるのが人情だろう。少年たちに、強いあこがれの気持ちを抱かせてしまった。



D

 LGBTがどんどん追加されているのを傍で見て、難しい問題だな、ということを前々から感じていた。そもそもがそれまでの社会から疎外されていたマイノリティのための言い回しなので、その理念上、どんなマイノリティも排除するわけにはいかない。だから少し目を離した隙に、LGBTQIAになった。こうしてみると、性的マイノリティ界の中で、LGBTというのはマジョリティ側だったのだな、と思う。そして、別に俺もそこに列せというわけではないが、性的傾向という意味では、さしずめ僕はこれになる。Dosukebeの頭文字である。Dだから受け入れてあげないとね、という優しい扱いを受けたい。この主張により僕はいつかノーベル平和賞を手に入れるような気がうっすらする。



 以上です。
 いやあ、今年もさまざまな名言・流行語がcozy rippleを彩りましたね。
 惜しくも最終候補から漏れたものでは、「帯状疱疹」「嬉志夢と危肢無」「虚飾性」「どちらもだ! だれもかれもだ! みんなでしよう!」「橋の名は勃起橋」「死んだ目キャメラマン」「誰も悪くない」「せいせいせいせいせいせいせいせいせいせい」「インナーパーティー」「記憶がひとりぼっちで哀しい」「マリントッツォ」「500億首」「ずんでる」「あちらが勃起すればこちらがED、こちらが勃起すればあちらがED」「キャプション」などがありました。やはり2年分ということで盛りだくさんですね。
 というわけで、それではお待たせしました。いよいよ今年のcozy ripple名言・流行語大賞を発表したいと思います。おととしの長渕剛さんに続き、今年のプレゼンターはこの方、りゅうちぇるさんです。
「どうもー。えっと、2年ぶりのRYUCHELL名言・流行語大賞ということで、この場に立ててることがすっごく嬉しいです。でもイクメンと呼ばれて嬉しくはないし、父親としてやるべき当たり前のことしかしてないのでモヤモヤします。男がしたら褒められるようなことなんて、世の中に一つもなくなれば良いのにね。みんなが、愛を忘れずに、誰もが自分らしく輝ける時代になってほしいです。これからは、僕自身が認めてあげられた本当の自分で、新しい形の家族を愛していきたいです。ありがとうございましたー」
 新しい発表の形! プレゼンターなのに大賞を発表しない! さすがです! 大賞を決めるとかモヤモヤします! すべての言葉がそれぞれ自分らしく輝いている! 本当にそうですね! じゃあ代わりに司会の私が大賞を発表したいと思います! 大賞は……「生娘をシャブ漬け戦略」(特別推薦枠)です! 確実に2022年最大のパワーワードだったはずなのに、公序良俗の観点から本家の新語・流行語大賞にはノミネートさせてもらえないこの言葉を、風化から救うことができるのは俺しかいないと思い、このたび大賞を授与することといたしました。発言者の氏名は伊東正明さんです。やっぱりね、この世の全ては結局のところ、生娘をシャブ漬けにするような感覚でやっていけばいいんだと、しみじみと思いますよ。おそらくこの結果には、ジェンダーレスの旗手、りゅうちぇるさんも納得だと思います。もう不謹慎に不謹慎が重なって、逆に清々しい爽やかささえ漂いますね。
 そんなわけでひとりひとりの個性と尊厳が守られる、旧時代の考え方とは根本的に異なる、新時代を感じさせる結果となった、2年越しの第13回cozy ripple名言・流行語大賞も、これにてお開きとなります。次回はもちろん来年を予定しております。また来年お目にかかりましょう。今から僕だけ愉しみですね。ちなみに早くもpuropediaに今回の結果が更新されております! 運営優秀!