実録ドキュメンタリー連載「ファン活」第2回


 ま、MAX? MAXってあのMAX? 俺が? 令和元年、じきに36歳になる俺が、MAXのファンになる? そんな! そんな、そんなことってあるかよ……。いくらファンになるものが自発的には思い浮かばないからって、よりにもよってMAX……。あんまりじゃないか。MAXはないだろ、MAXは。だって、だってさ……、MAXだぜ? わかってんのかよ、……MAXなんだぜ?
 ファンになる能力の低さに危機感を覚えてのこの企画なんだから、つまりファン道における超ビギナー、産まれたての仔鹿のような僕に、もっとファンをしやすい、魅力あふれる、とっかかりの多いものを与えてくれるのが普通の発想だろう。それがMAX。産まれたての仔鹿に、母乳ではなくげんこつ煎餅を与えるようなものではないか。死んじゃう。そんなの食べられない。歯だってまだ生えていないのに。絶対に死んじゃう。虐待だ。
 でも文句を言っていても仕方ない。お見合いってそういうこと。大いなる力によって与えられたものを、受け入れていかなければならない。置かれた場所で咲くのだ。服のサイズが合わなければ、自分の体を服のサイズに合わせていくのだ。唾液で溶かして、ふやかしてげんこつ煎餅を嚥下するしかない。そのようにして、僕はこれからMAXのファンになっていく。MAXの。MAXの(笑)。
 まず現状でMAXについて知っていることを書き出していこう。女性4人組である。沖縄のアクターズスクールの出身である。最初は安室奈美恵と一緒にやっていて、そのときはスーパーモンキーズだった。トラトラトラ、がいちばん有名(考えてみたらトラトラトラってなんだろう。旧日本軍と関係あるのだろうか。だとしたらずいぶん過激だ)。「夜もヒッパレ」の印象が強い。90年代だって別に注視していなかったが、2000年以降の動向は本当に分からない。でも途中で違う人が入り、そしていつの間にか最初の4人に戻ったことは知っている。あとつい最近、ひとりの妊娠が発表された。
 このくらいだ。絞り出した。まさか僕の人生の中に、MAXについての記憶をたどる時間があるとは思わなかった。そんなこと言ったらこの記事を書いているこの時間だってそうだ。山之辺マサトじゃない僕の人生は有限なのに、それなのにMAXに時間を費やしてしまっている。とてつもない無駄、と言ってしまえばそれまでなのだけど、でもちょっと待って。……なんだ、この感覚は? これまであまり味わったことのない気持ち。まるで空気をむしゃむしゃ食べているような、自分がこれまでとは違う種類の生命体になったような心持ちだ。MAXという、あまりにもあんまりなものについて、きちんと向き合うということをした結果、チャクラが開いたのかもしれない。チャクラってなんなのかあんまりよく知らないけど。
 でも自分の中に新しい感覚が芽生えたのだとしたら、それはファンというものになってみた効用と言えるかもしれない。これがファンか。今年は筋トレなんかし始めたし、ファン活動も開始した。令和になって新しい自分が生まれようとしている。