パピ労の日報告


 今年もまた11月30日がやってきて、やってきた瞬間に、心の底から「パァーとワクワクちゃんたちとびはねたのだった。すなわちパピ労の日なのだった。パピロウ様のことはもちろん好きだけど、普段は畏れ多くてとてもそんなこと伝えられやしない。本当は視界に入ることさえおこがましく思っている。でも1年で1日だけ、この日だけはその気持ちを隠さなくっていい。勇気を出して言おう。僕の中に生まれたやわらかいかなしさ、それはパピロウ、それはパピロウだよ、って。
 というわけでパピ労感謝の日、報告レビューです。

 最初に紹介するのは、ハッケヨイ公国のノコータ・ノ・コータさん。村で毎年伝統的に行なわれているというお祭り、スニーカー脱ぎ履かせ祭りに参加して、優勝した暁には勝者インタビューでパピロウへの労りメッセージを叫ぼうと企画してくれました。結果としては、脱がすことはできても履かすことが絶望的なまでにままならず予選落ちでしたが、その心意気を嬉しく思いました。しかし映像終了後、当地でのそのお祭りに興味を持ったのでウェブで検索してみたところ、そんなお祭りはウェブ上のどこにも存在せず、おやおや? と思いました。早速BPOに訴えようと思います。

 次に届いたメッセージは、メソメソ共和国のナイテ=ヘンワさんから。毒きのこしか生えないことで有名だという森をナイテさんが歩き、目にしたきのこを迷いなく収穫して、籠いっぱいになったところで籠ごと火をつけ、その香ばしいにおいに釣られて姿を現した森の草食動物たちを一網打尽に捕獲し、檻いっぱいになったところで檻ごと火をつけ、その香ばしいにおいにつられて姿を現した肉食動物を一網打尽に捕獲し、檻いっぱいになたところで檻ごと火をつけ、すべてのものを燃やした炭が大地に豊穣をもたらし、そして大地は毒きのこを生やし、やがてナイテさんがそれを収穫して……というサイクルを、僕は届けられた映像で7回確認しました。それから画面右下の時刻を示すデジタル表示を見て仰天しました。最初にナイテ=ヘンワさんが森に入った時から、最後の7回目のきのこが生えるまでに、なんと30億年の月日が経っていたのです。途轍もない早回しで、全4分に編集されているため気づきませんでした。僕が火の鳥が好きなのを知って、わざわざ30億年かけてそんなことをやってくれるなんて、20秒くらい感慨無量でした。

 次に紹介するのは、ハニュウユズレナイ地方の原住民、プルシェンコ族のみなさん。文明に染まらず、現代においても狩猟と採集で日々の糧を得る暮しを続けているプルシェンコ族のみなさんからも、パピ労感謝の報告VTRがLINEで送られてきました。プルシェンコ族の特徴は、なんと言ってもそのペニスケースの大きさですが、あれは装着者の身長の2,185964倍という決まりがあるということを、今回の映像で初めて知りました。そしてその細かい数字というのは、1年に2度、すなわち夏至と冬至の日にだけ、ハニュウユズレナイ地方の中央部にある湖、ハニュウユズル湖の水面に浮かぶ飛島を、一直線に貫くように陽の光が照らし出す、その光を眺めていた大昔の酋長が思いつきで決めた数字なのだそうです。それにしても身長の約2,2倍。プルシェンコ族の男性の平均身長は185センチなので(わりとでかい)、一般的なペニスケースの長さは4メートルに及びます。いくら材料がポリプロピレンだとは言え、4メートルもの筒となるとずいぶんな重量となることでしょう。装着方法は、左右の根元から伸びる紐を腰で結わうと同時に、ペニスケースの突端にも紐がついているので、それを頭部に乗せた専用の冠のようなものと括りつけることで、重量を拡散させると同時に安定感を得る仕様となっており、僕の目からはその姿は、安定感を得る代わりに大事なものを失っていると感じずにはおれないのですが、しかし外部の人間が民族固有の価値観のことをとやかく言うのはよくありませんね。それにしてもペニスケースの説明をするVTR中、なんともざっくばらんに、ペニスが画面に映し出されること! って言うか半透明のポリプロピレンのペニスケースを着けたところで、ペニスはほとんど見えてますしね。ちなみにそれは大体みんな4センチくらいでした。それで、その民族探訪みたいなVTRの、どこがパピ労なのかと疑問に思い始めたところで、家のインターフォンが鳴りました。出てみるとamazonからの届け物で、発送元を見るとそこにも『amazon』の文字が。アマゾンからアマゾンが届いた! という初体験に色めき立つと同時に、4メートルほどある箱の中身がその瞬間に察知され、パピ労という各地からのメッセージを毎年愉しみにはしているのですが、贈り物は明らかなルール違反なので、これはそのまま配送員の人にくれてやりました。「俺は勃起するとペニスが3メートル88センチになるからこれはちょうどいい」と配送員は喜んでいました。よかったね。

 最後に紹介するのは、モンゴルのドルゴルスレンギーン・ダグワドルジさん。この人はパピ労の日、皆勤賞ですね。なんでやねん! この人、毎年メッセージくれるけど、毎年パピロウのこと知らない風やん! 誰やねん! この人に毎年これ頼む人! どういう狙いやねん! 「パピロウ! 元気ー? 元気っていいよね、元気はいい、元気はいいよ」知らんがな! なんやねん、その薄い問いかけ! 「パピロウのがんばりが、たくさんの人にね、元気をくれるんじゃないかな、と思いますよ、はい」だからなんやねん! そのふわっとした話! 元気にこだわりすぎだし! 「元気……、でも元気ってなんだろう」悩むな! お前が急に悩み始めるな! 「まあたぶん元気って、周りを明るく、元気にさせることだよ!」元気の説明に元気を使うな! バカか! 「じゃあパピロウ、これからも元気でがんばれ!」うっさいわ! ねえ、ちょっとマジで嫌なんだけど! なんなの? このダグワドルジの解放してくれなさ! まわしをすっごくしっかり掴まれてる感じ。ダグワドルジ側はいったいこの行為にどんなメリットを感じてるの? ないよ? たぶんないよ? もう本当にいい加減にしてほしい……。もう家にダグワドルジからのVTR、6本もある……。来年で7個揃ったら、神朝青龍が現れて、願い事をなんでもひとつ叶えてくれないだろうか。

 というわけで、今年もてんやわんやのうちに過ぎ去ったパピ労の日報告。でも11月22日、いい夫婦の日も、最初は見合い結婚だったからお互い遠慮がちで、自宅にいるのに気が休まらなかったりしたが、でもそれも半年くらいするとすっかり慣れて、銀婚式を迎えた今ではこれまでの日々のすべてをかけがえなく感じていたりするわけで、そんな風にパピ労の日も、距離を競うのではなく、どう飛んだか、どこを飛んだかを大切に捉えていけばいいんだと思う。ではまた来年。