仲間内10大ニュース2018

 
『今回のラインナップの傾向として、やっぱり友達って本当にぜんぜんいない期間が続くと、友達がいたらどういう友達情報が自然と入ってくるものなのかまるで判らなくなってくるものだなあ、という感じになったと思う。空想が過ぎた。来年(もう今年だが)は、未だかつてないリアルな10大ニュースを発表したい。なぜなら友達が実際にできたから、10大ニュースも現実に則したものになったのだ、読み物として10大ニュースの記事のおもしろみは減ったが、でも僕には現実の友達ができたからなんの問題もないのだと胸を張りたいです。』
      (2017年仲間内10大ニュース発表記事より)


 1年前の俺は予言者か、と驚嘆している。たぶん僕は上の記述を、冗談のつもりで書いている。でもそれが真実になってしまった。この数年、できないできないとあれだけ思い悩んでいた友達が、たった1年間でこんなにできるって、誰が想像していたろうか。結局、友達って寂しがり屋だから、友達がたくさん集まってくる所に引き寄せられるんだと思う。渋谷のスクランブル交差点のクソどものように。これはもうさすがに多すぎるな、こんなにいても逆に困るな、と思っても、もう歯止めが効かない。友達と友達が性交して、繁殖したりするので、勝手に増えたりする。もはや気持ち悪い。ハエやトンボの複眼ってすごく気持ち悪いけど、友達に対して同じ印象を持つ。もう一旦すべてなかったことにしたい。でももう後戻りできない。僕はこの雑に増殖する友達を抱えながら生きていくしかないのだと思う。この状態の唯一の救いと言えば、この10大ニュースにおいて、例年のSTAP友達のSTAPエピソードではなく、リアリティ溢れる発表ができるということだ。
 というわけで今年のランキングです。
 カウントー……(頭が高速回転する)……ダウン!

10位 小林が火星に行く
 ある晩に小林からLINEのメッセージが届いて、「いま火星にいるんだ」と言い出す。「ユニークな名前のラブホテルだね」とメッセージを返したら、「違う違う、本当の火星。マーズ!」などと言う。「それなら画像を送れ」と送信したところ、届いた画像は、タルシス高地に立ちオリンポス山の前で自撮りしているらしき小林の姿で、「マジだ!」と興奮した。数日後、おみやげとしてヘラス盆地サブレを持ってきてくれた小林は、少し赤茶けた顔をしていて、「火星焼け」と笑った。

9位 大林が水星に行く
 ある日ポストに絵葉書が届いていて、見ると差出人は大林、消印は水星だった。肝心の写真や文面は掠れてしまっていて、あまり内容を把握できなかったが、それこそが水星からはるばる配達されてきた証拠かもしれないと思った。しかしこちらの住所に関してはとてもはっきりと記されていて、後日大林にその点について訊ねたところ、「そこはほら、郵便屋さんの迷惑になる部分だから」という答えだった。水星の感想として、「水星と言いつつ太陽の近くやからカラカラやねん。めっちゃ暑くてすぐタクシー乗った」「でも重力は小さいもんで、そういう意味では体は楽やから、まあトータルでトントンやな」という、とてもリアルな実体験レビューを聞くことができた。

8位 若林が金星に行く
 職場の同僚である若林に、3連休はどこへ行っていたのかと訊ねたら、「ちょっと気張ってツレと金星に行ってきた」という答えが返ってくる。「ユニークな名前のラブホテルじゃないか」と言ったら、「違う違う、マジの金星。ビーナス!」と少し怒ったように言う。「じゃあみやげをくれよ」と挑発してみたところ、「そんなもん買ってねえよ」と苦しい弁明。「やっぱり嘘じゃん」と笑う僕に、若林がようやく思いついた様子で差し出してきたのはパスポートだった。見ると台湾や韓国のスタンプに並んで、金星の文字。うたぐって悪かったと平謝りした。ちなみに金星は役人が腐敗しているそうで、キャリーケースを勝手に開けられ、日本から持っていったお菓子や化粧品がパクられたと言って憤慨していた。

7位 中林が木星に行く
 もうすっかり人気You tuberとなった中林が、天下一品、餃子の王将、蒙古タンメン中本をハシゴした後、シメとして木星に行っていた。ぜんぜん知らなかったけど、木星ってもうそんなに気軽に行ける場所になっていたのだな。あるいは人気You tuberともなると、向うの運営側から気を遣われて、いろいろ便宜を図ってもらえるのかもしれない。さすがは人気You tuber、木星では急遽、平原綾香の「スマイルスマイル」(「ダーウィンが来た!」エンディングテーマ)を唄うという企画を立てていて、マジワロタ。コメント欄に、「それじゃない!」「平原ちがい!」といった突っ込みが殺到していた。

6位 林が土星に行く
 林と言うか、林一家。岐阜での暮しに見切りをつけた林が新天地に選んだのは、土星だった。大学のアメフト部仲間で送別会が開かれ、その席で「奥さんは反対しなかったのか?」と訊ねると、「できた女なんだよな、俺にはもったいないくらいの」とはにかんだ。既に何度か家族で下見に行っているらしく、「大人はぜんぜんダメだけど、子どもはやっぱり順応が早いな。もうあっちで友達ができたみたいだし、今度その子たちと輪っかの上をサイクリングする約束をしたってよ」と微笑む林の横顔には、新しい世界への期待と不安、家族への申し訳なさ、そして愛が、複雑に入り混じっていた。口に出しては言わなかったけど、今のお前、いい顔してるぜ、と僕は思った。

5位 上林が天王星に行く
 夏、ラウワンで3時間くらい遊んだあと、もちろんラウワンの中でもわりとビールとか飲んでいたのだけど、でももうちょっときちんと飲みたいよな、ということで、駅の近くにあった磯丸水産で貝を焼いて日本酒を飲んだ。それで愉しく解散したのだけど、僕が家に帰ってシャワーを浴び、さて寝るかとなったタイミングで、上林から電話がかかってくる。「寝過ごした……」というのが第一声。それから「天王星まで来てしまった……」と続き、最後の「もう帰りの電車がない……」という声はほとんど消え入りそうだった。上林、バブルサッカーではしゃぎ回っていたもんな。「駅のホームがさみぃよ……」と訴えてくるので、とりあえずバイパスまで歩いてガストにでも行けよ、と僕は言った。

4位 林田が海王星に行く
 林田がとうとう7回目の痴漢で捕まる。逮捕が7回ということは、実際に痴漢行為を行なった回数がそれの数倍であることは言うまでもない。いい加減よせ、という我々の進言を一向に聞き入れず愚行を繰り返してしまう林田は、あまり友達相手にこんなことを言いたくはないが、やはり病気なのかもしれない。7回目の逮捕となると、行政側も話を穏当に済ますことはできないようで、とうとう海王星行きの審判が下った。海王星はなにしろ人口密度が低いので、電車も商業施設も、ぜんぜん混んでいないらしい。「これは海王星じゃない、痴漢地獄星だ」と林田は嘆き、「痴漢地獄星」というパワーワードが我々の間でしばし流行った。

3位 林下が冥王星に行く
 恋多き女、しかし幸せに縁遠い女、林下が、このたびとうとう結婚の運びとなり、みんなでお祝いする。結婚相手とのなれそめを聞くと、「美容院が一緒だった」というあまりおもしろくない答えが返ってきた。しかし現実というのは得てしてそういうものかもしれない。夫となる人は冥王星の人で、さすがに向こうの実家で同居というわけではないけれど、実家からほど近い場所にあるコーポに住むことになったらしい。知り合いのいない冥王星で、しかもそんな環境で、嫌じゃないのか、大丈夫なのかと、林下のわがままな性根を知る一同は次々に不安を口にしたが、そのあとの「でも大地主なの」という言葉に得心がいった。

2位 林原も水星に行く
 林原が電話をかけてきて、「俺いまどこにいると思う?」と訊いてくる。「知らねえよ」と答えると、「なんと水星なんだな、これが」などという。「ユニークな名前のラブホテルだな」と応じると、「違う違う、本物の水星。マーキュリー!」と怒鳴ってきた。こいつはいつもすぐに声を荒らげるんだよな、と少しうんざりした。しかも水星に行ったことをサプライズ風に話すが、その1週前に大林から水星の体験記はさんざん聞いていたので、まるで新鮮味がない。日本ハムファイターズ時代の同僚である大林と、ABCクッキングスタジオで知り合いになった林原は、それぞれ知り合いでもなんでもないので、仕方ないことではあるのだけど、友達がほうぼうにい過ぎるとこういう状況が出てくる。困ったものだ。

1位 我々が同じ時代に宇宙船地球号に居合わせたという奇跡
 今年のニュースってわけじゃないけど、いろんな友達がいて、その友達がいろんな理由でいろんな星に行って、なんかそういうことを思うと、この時代この瞬間に、我々が同時に生きているということ自体が、その暮しの中で起ったどんな衝撃的な出来事よりも、実はよほど衝撃的で、奇跡まみれなんじゃないかって思う。いや、奇跡って言うと、偶然みたいになっちゃうから、言葉を変えたい。だって僕らが出会ったことは、決してたまたまなんかじゃないから。僕らは知り合うべくして知り合ったし、友達になるべくして友達になった。それはこの宇宙が誕生した瞬間から運命づけられた必然なんだと思う。これからもかけがえのない友達たちと、ともに生きてゆきたい。

 というわけで、全体としてちょっと地味な、なんの変哲もないニュースばかりになってしまったけれど、でも冒頭でも言ったように、現実の友達とのトピックスなんて、そんなもんだと思う。そんなもんでいいんだ。プラスにしろマイナスにしろ、友達にそんな大きな出来事は起ってほしくない。本当はなんにもしてほしくない。息を吸って、吐いてほしくない。だって生きているってことは、死ぬってことだから。死なないでほしい。だから生きないでほしい。友達は、本当は生きてないくらいで、ちょうどいいんだ。